正しく傷つくべきだった

濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』という村上春樹原作の映画に出てくる、主人公の家福の台詞。「ぼくは正しく傷つくべきだった。ほんとうをやり過ごしてしまった。」これは作品における、もっとも象徴的な台詞で、この言葉が、ずっ…

桜が散ったあと

桜がもうすっかり散ってほとんど葉桜になっていた。辺りは初夏のような色合いになっているけれど、でも、まだぽつぽつと花びらも残っていて、風が強く吹いたら、その残った桜の花びらが、はらはらと散ってくる。 もう桜の季節も終わった…

春のせみのような

いつまでも寒さが残ってるなぁと思っていたら、今日はものすごく暑くて、夏のように日差しも厳しかった。桜はもうだいぶ散ってしまっている。小鳥が花の蜜を吸っているのか、桜の花の周りで甲高く鳴いていた。ベンチで少し休んでいたら、…

花の蜜を吸う子供

めまいがひどくて横になっていたら、窓の向こうから鳥たちのさえずりが聴こえてきた。その音色は、めまいのときでも灰色の膜を通り抜けて真っ直ぐに伝わってくるようだった。 それから、少しだけ外を歩いた。桜はもうだいぶ散り始めてい…

人が恋におちる瞬間をはじめてみてしまった

羽海野チカさんの漫画が好きで、特にハチクロは、大学時代によく読んでいた。美大の学生で主人公の竹本くんが、北海道に自転車で一人旅に行くという場面があって、そのことに触発されて、さすがに自転車では行けなかったものの、鈍行で東…